環境研究


環境問題について参考になる資料等を紹介していきたいと思っています。


第14回静岡地方自治研究集会


第14回静岡地方自治研究集会

 2009年10月31日、第14回静岡地方自治研究集会が開催されました。第4分科会「環境・ごみ・リサイクル」の資料に興味深い報告がありましたので一部を転載します。


静岡市における環境・清掃行政の現状と住民運動の到達

大野健治、Oono Kenji (静岡県環境・防災ネット静岡)
松村行啓、Matsumura Yukihiro (静岡県環境・防災ネット静岡)

1.はじめに

 静岡市は2004年4月1日、平成大合併で打ち出された「基準の緩和」により誕生した14番目の政令市です。人口は70万人でも南アルプスまでを所管する行政区域は1,373.89kuもあり、人口密度はわずかに514人/kuですから、行き届いた行政が行なわれるかが疑問視され、同時に合併時の協定が履行されるかが問われていました。
 広域市町村合併時の重要問題の1つは、病院、清掃工場、最終処分場、斎場などの公共施設をどこに、どのような運営形態で設置するかが課題となります。とりわけ、住民にとって必要不可欠な施設であるものの、いわゆる迷惑施設については慎重な取り扱いが求められます。静岡市の合併協定書では、老朽化した清水区の清掃工場を廃止し清水区茂畑に新設すると明記されていることから、この問題についての取り組みの経過と課題について報告します。

2.住民の合意のない清掃工場増設の問題点

 2004年10月、市は茂畑地区への新清掃工場の建設を断念し、西ヶ谷清掃工場を処理能力の高い施設に建て替える方針を地元自治会に提示してきました。合併してわずか6ヶ月です。市は、
 *茂畑地区は地形上高低差があり、費用が莫大になる
 *清水区には他に建設場所が見当たらない
 *灰溶融炉を含む最新施設として整備する
という説明でした。環境問題とりわけゴミ処理施設について住民との合意形成に時間がかかるにしろ、あまりにも突然であり、住民無視の密室行政と言わざるをえません。問題点を整理すると、
 @茂畑地区の地形上の問題は、以前から指摘されているもので、建設断念の理由にはならない。
 A新設する場合は、環境アセスメントの義務と住民との協定締結が必要となるが、これを避けるため、合併にあわせて既設施設の増設にしたのではないか。
 Bゴミ発生量を大幅に上回る処分計画では、ゴミ減量・分別処理方針と矛盾する。
 C灰溶融炉およびスラグの安全性と利用内容、環境汚染は大丈夫か。

3.取り組みの基本姿勢と運動の展開 

 環境問題についての関心は非常に高く、住民は大気・水質・土壌汚染による環境への影響を心配しています。ゴミ問題の基本は、建設予定地の住民の合意をうることは当然ですが、市民全体がゴミ問題を考えてもらう絶好の機会になるように努める必要があります。しかしながら、市の計画は地域住民はじめ市民にほとんど知らされずに行なわれ、わずかに都市計画変更審議会の開催公告があったにすぎませんでした。これでは、ゴミ減量や、分別処理、リサイクルなど、市民とともに考える機会をもつことが失われてしまいました。
 このため、わたしたちは限られた情報でしたが、地域からの情報発信、講座の開設、訴えに取り組みました。同時に産業廃棄物の不法投棄やゴミ減量などに取り組んでいる団体、個人に呼びかけて。「環境・防災ネット静岡」を立ち上げ、情報交換と交流・連携、不法投棄の現地調査を行なってきました。この組織は、公正・中立、各組織の自主性の尊重を基本に運営しました。

4.具体的な取り組みと到達点

@市長に13項目の公開質問状を提出し、その回答を市民に返し判断を求めました。
A市議予定候補者全員に公開質問状を出し、公明党以外の候補から回答をもらい、これをホームページで市民に公開し、市会議員選挙への参考に供しました。
B当初計画(ガス溶融炉)について住民説明会の開催と環境測定値を公表させました。(計画変更後の説明会なし)
C当初導入の予定であったガス溶融炉からシャフト炉型直接溶融炉に変更されました。
 ガス灰溶融炉はすでに2機導入されています。これは混合ゴミ(一般廃棄物)を焼却処理した後の灰を、施設に連結したプラズマ式灰溶融炉で重金属などを封じ溶融スラグに生成する施設ですが、大量の電力を使用するだけではなく、スラグの溶解による安全性が心配されています。また、炉そのものの爆発事故があったばかりです。
   一方、直接溶融炉(新日鉄製)は全国22箇所で導入(静岡市調べ)されていますが、こ
の施設は混合ゴミを直接焼却炉に投入し、熱源にコークスを使い、1800度の高熱で焼却・溶融し、スラグと金属質の多いメタルに分離する施設で、完成すれば、全国最大級の施設(250d×2機)となります。しかし溶融炉方式をとっているため大量のCO2が発生しますし、メタルも不純物が混在しているため利用の目途がありません。
D再処理センターや最終処分楊を併設せず、環境測定値は毎年公表する約束をさせました。

5.今後の課題

 分別していないゴミを焼却して生成したスラグやメタルには、有害な重金属が含有されています。したがって処理方法によっては、磨耗や耐用年数によって、飛散や地下に浸透する恐れがあります。スラグは、静岡市では建設骨材として、市発注業者に使用させ(JIS規格品外の生コンに使用する場合は埋め戻し材、外溝回り、簡易舗装などに限定)ています。神奈川県でスラグを砂利の代りに使ったマンションで亀裂が見つかり問題になっています。
 溶融炉を導入している地域の多くで、ゴミの分別処理・減量化の取り組みの後退が伝えられています。
 国では最終処分場の確保が困難であるとの考えから、今後の補助対象は離島、相当な期間処分場が確保されている以外は、「灰・直接溶融炉施設」としていることから、この問題は今後全国各地にひろがる恐れがあります。施設が老朽化し、建て替えの時期を迎えている自治体では、今からその対策をとる必要があります。
 いくら最新設備といっても完全無害な施設ではありませんし、C02は大幅に増えます。最終処分場も手狭となっていることから、スラグ・メタルは市場に売却(千葉市、秋田市、島田市、静岡市)されることになり汚染が全国に拡散する恐れがあります。
 環境省は安全基準と含有物の分析結果を公表し、管理の徹底を指導すべきと考えます。
 また、これらの施設は専門的な技術を要することから、建設から維持管理まで特定の大企業に依存しなければならない特徴を持っています。
 最後に、静岡市では産業廃棄物の不法投棄が一部あるものの、多くは中山間地の耕作放素地や倒産した会社の敷地に野積みにされたもので、管理がほとんどされず、その一部が流出している状態です。市は、私たちの指摘に対し、土地所有者が存在しており、市が直接撤去するわけにはいかない、と答え、指導を放棄しています。全国的にも耕作放棄地が増えており、法の整備と行政指導の強化が求められます。
 それでも住民が団結して取り組んだ一郎地域で、本年7月、市立会いで自治会と地主との間で協定が成立し、地上部分(建物部分を含む)の撤去が地主と産廃業者の負担で行なわれました。

(このレポートは、昨年名古屋市で開催された日本科学者会議の総合学術研究会報告から掲載した。)

6. 建設の現状と市への要望、C02削減問題の課題 

 すでに新西ヶ谷清掃問題については、本集会で5回にわたり報告(前頁参照)していることから、まず建設状況であるが写真のとおり本体工事は完了し、現在は見学通路、植栽、機器の点検が行なわれ、その後試運転となり本格稼動は年明けの見込みとなっています。本格稼動の前に地元に説明を行なうとともに、市民にもオープンすることになっている。
 私たちは昨年の10月10日に静岡市の葵区長宛に地域(安倍口、団地、足久保)の要望書を提出しました。要望項目は「交通・安全対策に関すること」「複合施設に関すること」「防災と地域住民の安全対策に関すること」〈安倍ロ団地に関すること〉「新西ヶ谷清掃工場建設及び旧清掃工場に関すること」の5項目で細部の要望項目は多数の部局にわたる25項目で、清掃・環境に関わる要望は次のとおりです。
 交渉は会議室で入れ替わりで、一部局30分でしたが幾つか改善が図られました。ただし、清掃工場関係は私たちの要望が清櫓工場の見学とセットであったこと、時間的な問題もあり年内開催になりました。

西ヶ谷清掃工場建設及び旧清掃工場に関すること
 @産業廃棄物を持ち込まないこと。また最終処分場を建設しないこと。
 A溶融炉で生成されるスラグ・メタルの成分表を公表し、安全性が確認されるまで再利用しないこと。また施設から排出する物質による「大気・水質・土壌」の安全の確認と測定値を公表すること。
 B旧清掃工場を解体する場合、安全対策は勿論、地域住民に説明し同意を得ること。
 C旧清掃工場の跡地利用計画を説明すること。なお、解体後は速やかに土壌、水質検査を実施し、住民に公表すること。
 D新清掃工場に隣接した地域で「温泉試掘調査」をおこなっているが、構想について説明すること。

CO2削減問題も課題です
 新清掃工場の主熱源はコークスです。現清水工場と現西ヶ谷工場、沼上工場は電気及び軽油を使用しています。勿論、これらの工場からもCO2は排出されていますから無視できませんが、市長が議会で説明したところによると「大幅に増えるが清水工場と西ヶ谷工場を廃止し、新工場の自家発電による電力会社のCO2が減ればプラス・マイナス」という言い訳をしています。驚いた認識です。世界の潮流は「地球温暖化対策=CO2削減」です。鳩山総理も25%削減と宣言しています。大量生産、大量消費、大量廃棄の考えを改め。ゴミの徹底した減量計画の早期具体化が求められる。


ストップ温暖化 自動販売機チェック全班で

新日本婦人の会静岡支部 田中綾子 

 新日本婦人の会(通称 新婦人)は、平和・くらし・教育などに関するいろいろな活動をしています。今回、「持続可能な地球を子どもたちに」と温暖化問題に取り組んだ報告をします。
新婦人は、「メイク・ザ・ルール」キャンペーン実行委員会に加盟し、「ストップ温暖化」署名行動や、グローパルアクションデーを全国のなかまと実施する等の活動をしてきました。
新婦人静岡支部も、街のいたるところにある飲料自動販売機−24時間、冷蔵・保温され、照明つきで便利なもの?−の調査を行い、温暖化防止を考えるきっかけとしました。また、飲料自動販売機調査を通じて、自分たちの住む街を知ることは、草の根の運動を展開している新婦人ならではの活動となりました。

調査概要

・調査時期:2009年1月〜2月
・実施主体:静岡支部の全ての班、延べ163人が参加。
・調査方法:会員が町内を見て歩き、台数・設置場所・プレートに表示されている年間消費電力量を記録する。
・調査した町数:141町
・調査した飲料自動販売機:1,407台(葵区822台、駿河区586台)
・プレートを確認した台数:190台
・調査した飲料自動販売機の特徴
 @各種メーカーの自動販売機がある。
 A新しい機種は、省エネ型になっているが大型化している。(2005年に消費電力量の表示義務が決まり。2005年以前のものは、表示がない。)

調査した会員の感想 

○数の多さに驚く。こんなところまで必要かと思った。私の町内に15台もあったのにびっくり。
○スーパーで飲料を売っているのに、なおかつ、スーパーの正面口、裏口に5台も!                          
○レンタルビデオ店、本屋の前、卓球場など5台、4台とずらっと並んでいる。
○閉店した店の前にもある。
○駐車場の一角に1台、2台とあって目立った。
○松富、伝馬町新田、丸子の各団地で災害救助ベンダー(災害時でも飲料水が販売できる)の自動販売機があった。
○近くに歩いて行ける店がないので、便利という声も少しあった。 

自動販売機と家庭のC02排出量を比較

 自動販売機1台に年間消費電力量は,家庭の2軒分とも言われていますがどうでしょうか。新婦人会員の家庭の年間消費電力量調査も同時に実施しました。
・190台の年間消費電力量の合計           326,536kwh
・平均年間消費電力量(1台分)            1,718kwh
・会員の家庭の年間消費電力量平均(1軒分)      3,758kwh
・190台のC02排出量合計             117,552kg
・会員の家庭の平均年間消費電力量によるC02排出量  3,758kg
・190台の飲料自動販売機で86軒分のC02を排出。
・2台の飲料自動販売機は,家庭の1軒分の電気を使い,C02を排出。

<今までの活動>

@調査前の2008年10月、「市長と語る会」に提言。
A調査後の2009年2月、「静岡市女性会館協力団体活動発表会」で発表。市内の巾広い女性団体にも「ストップ温暖化」の問題をいっしょに考えようと呼びかけた。

<これからの活動>

@自動販売機のことは、街づくりからも考え直すことが大事ではないか。低炭素社会は実現可能と、みなさんと行動をおこしていきたい。
A清涼飲料工業会、自動販売機工業会や、静岡市環境政策課と懇談していく。
B「温暖化を止めるルールをつくってください」という署名と、最大の環境破壊になる戦争をしない平和の署名をセットしてさらに取り組んでいく。


2009.10.31
第13回静岡地方自治研究集会 第4分科会「環境・ごみ・リサイクル」資料より

(一部修正した箇所があります)



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